大船渡市越喜来の海と、ここに生きる漁師が育む、とびきりに美味しい海の幸。
このプレミアムな魅力を、あなたの五感のすべてで体験してほしい。
そんなストーリーをお届けする、漁師のプロジェクトです。
第一幕は、「あじわう」。
越喜来の海産物をちょっとぜいたくな大人の味に仕上げました。
ホタテやホヤ、ワカメなどの生鮮食品以外にも、お客さんにお勧めできる商品を作りたい。そして、それぞれの旬でなくても、「越喜来の海産物は美味しい」と感じてもらえる商品を届けたい。そんな思いで、6次産業化プロジェクトをスタートしました。開発には、素晴らしい仲間たちが参画してくれています。
第1弾は、ホヤのレアスモーク、第2弾はホタテのオリーブオイル漬け。今後は、さらなる商品開発に加え、「味わう」以外の五感でも、越喜来を体験してもらえる仕掛けを作っていく予定です。養殖体験ツアーや映像制作など、さまざまなアイディアを具現化し、その取り組みの中で、水産業の現状や課題も伝えていこうと考えています。
白いペンキで「ナ」と、書かれた黄色いブイが並ぶ、越喜来湾の洋上。ここが、中野えびす丸のホタテ養殖場です。たくさんのブイが等間隔に取り付けられているのは、ガワと呼ばれる太いロープ。ほかの漁家と共同管理しているガワのうち、中野えびす丸は、22台を保有。稚貝から出荷間近の「2年生」まで、数十万個のホタテを海中に垂下し、養殖しています。
代々、漁業を生業としている中野家ですが、養殖業は、今から約50年前、中野勇喜が20代の頃に始めました。当時、漁師といえば、船乗りとして各地へ出稼ぎに行くことが主流。その間、地域の働き手が減ることに課題を感じた勇喜が、「地元で安定した収入を得られる産業をつくりたい」と、地元の仲間7人と着手したのがホタテ養殖でした。赤崎地区の蛸ノ浦で養殖法を学んだ彼は、それを越喜来湾崎浜に持ち帰り、養殖業を展開。現在では、Uターンした息子の圭が、中野えびす丸の船長としてその技術を継承しています。
中野えびす丸の収入の9割はホタテですが、ワカメやホヤの養殖、季節によって、ウニやアワビの漁も行います。16代目の圭が子どもの頃から、両親はそろって船に乗り、漁に出ていました。浜で作業することの多い女性が、沖に出るのはとてもめずらしいこと。代替わりした現在でも、親子3人で船に乗り、精力的に海での仕事に励んでいます。
越喜来という珍しい地名、昔は「鬼喜来」と書いたそうです。諸説ありますが、リアス式の入り組んだ地形は、鬼が隠れるのにちょうどよく「鬼が喜んで来た」ことが、この地名の謂れとされています。
この入り組んだ地形の中で、外洋にU字型に開けた越喜来湾は、穏やかでありながら潮もほどよく入り、養殖業には最適。豊富なプランクトンのおかげで、元気な貝や海藻が育っています。
越喜来には、湾を囲んで、砂子浜、小石浜、鬼沢、泊、越喜来、そして崎浜と6つの漁港があり、漁業者だけでなく、釣り人にも大人気。また、県内屈指のビーチである越喜来浪板海水浴場もあり、今では、鬼よりも人が喜んで来る土地として知られています。